シェヘラザードに捧げる物語




 客商売は評判が全てなのだ。


「うちも感染症には気をつけてる」

「大賀くんも色んな人に会うもんね」

「お前らに感染させられたって怒鳴りこまれたこともある」


 私が絶句すると、大賀くんは疲れた顔をして笑った。


「柴田の話を聞いてると楽しいよ」

「そう?」

「ずっと聞いてたい」


 え……?


「お待たせしました、日替わりランチのお客様」


 危なかった。
 
 言葉の意味を本気で受け取りそうだった。


「私です」

「失礼いたします」


 目の前にクリームとキノコのスパゲッティが置かれ、小鉢に入ったトマトサラダが添えられる。

 大賀くんの前には和風の、明太子と大葉のスパゲッティが湯気を立てていた。


「じゃあ、いただきますか」

「そうだね、いただきます」


 私たちは会話を中断してお昼を食べることにした。本当にいいときに運んできてくれたものだ。

 とろりとしたクリームがスパゲッティに絡んで食べやすい。しばらくその美味しさを堪能した。