シェヘラザードに捧げる物語




 たぶん、春日野さんの意見に賛成したと思う。

 お金は命の次に重いものだ。無いと生活できないし。

 それを貸したり借りたりするのは、とんでもないストレスがのしかかってくるのと同じだ。

 ……借りるほうはそうでもない人が一定数はいるけれど。


 ぼんやりとそんなことを考えていると、頼んだコーヒーが運ばれてきた。


 真っ白なカップに黒い水面。立ち上がる湯気はいい香りがする。

 砂糖とミルクを入れてスプーンでかき回す。茶色くなったそれを一口含んでソーサーに戻した。


 こんな静かな時間は久しぶりだ。


 スマホが震えて着信を知らせる。表示された名前を見ると大賀くんだった。


「もしもし」

『柴田、今電話しても大丈夫か?』

「うん、大丈夫」


 私は電話に出ながらトイレのほうへと向かった。幸い人はいなかったので通路の壁に背中つけてこそこそと会話する。


『メールありがとう』