シェヘラザードに捧げる物語




 あと二駅で乗り換えの駅だ。


「そいつ通して動画は消すように伝えておいてくれ」

『わかった』

「原嶋さんとできるだけ一緒にいてやれ、いとこだろ?」

『俺はなんもできないよ』

「いいんだ、とにかく味方でいてやれ。役に立つ立たないじゃない」


 返ってくるまでに少し時間がかかった。乗り換えまであと一駅。


『いってくる』


 鼻にかかったアナウンスが乗り換えの駅名を告げる。俺はスマホを内ポケットに入れると、ドアが開くと同時にホームへと突き進んだ。

 エスカレーターを一段飛ばしで登り、大股で通路を……といきたかったがかなり混んでいた。腕時計を見ると午後八時。こんな時間なら乗り換え駅はそりゃ混むか。

 目的の電車がタイミングよく滑り込んできた。余裕を持って乗ると、またスマホを確認する。


『また結園だって?』


 送り主は荒木田(あらきだ)先輩だ。そういえば前に結園グランドホテルで起きたトラブルを担当したのは彼だったか。