シェヘラザードに捧げる物語




 これは帰ったら返信しよう。

 
『大賀、どうだった? こっちはもう叔父さんも叔母さんも大変で……』


 指が止まる。どうしたもんか。

 今にも泣きそうな照屋(てるや)の顔が浮かんだ。俺は「まだ調査中」と打ち込んで送信する。

 返事はすぐに返ってきた。


『マジか、どのくらいかかる?』


 俺の指は宙をさまよう。個人情報が関わってくる以上、守秘しなければならない事項が多すぎる。


「一ヵ月くらいはかかる」

『わかった、スタッフさんの怪我も含めて?』

「伝わってるのか」

『残って野次馬してたやつが言ってた』


 その場で頭を抱えてしゃがみたくなる。全く気がつかなかった……。


「そいつ動画とか撮ってないよな?」

『撮ってた、それが送られてきた』

「それお前は他のやつに見せてないよな?」

『俺は見せてない。送ってきたやつはグループチャットに投下されてたって』


 ……所長に報告することが増えてしまった。

 ため息をつきたくなるが、車内の電光掲示板を見て堪える。