シェヘラザードに捧げる物語




 まさか事実を話すわけにもいかなくて、適当にでっちあげて事故だということにした。

 悲しいかな、これが慣れっこになってしまっている。


「女の子なんですから、顔は気をつけないと駄目ですよ」

「あはは……女の子って年でもないですって」

「私からすれば十分、女の子ですよ」


 運転手さんはそこで言葉を切ると、スピードをゆるゆると落とした。


「男は傷ができたところで箔がつくだけですが、女性は違うでしょう」

「傷モノっていう人、今でもいますもんね」

「でも今はあれですよ、整形手術で傷痕とか綺麗に治せますし」


 この運転手さんおしゃべりだな……。

 悪い人ではないけれど、傷にはあまり突っ込まれたくない。


「そうですね……テレビで見たことあるけど、火傷の痕とかほぼわからないくらいになってました」

「今の技術はすごいですよね」


 それから現代技術のすごさに話題が移って、私はこっそり胸を撫で下ろした。