シェヘラザードに捧げる物語




 彼女はバッグからスマホを手にすると、私に軽く会釈をして席を外した。

 その姿を見ながら、「この挙式を絶対に完璧に成功させるぞ」と改めて決心し、この〝お願い〟をもう一度自分自身に確かめさせた。

 ……それでも披露宴はめちゃくちゃになってしまった。


「……謝罪の予定組まないと……」


 大賀くんを通したらスムーズに連絡できないだろうか。

 お客様方も驚かれたよな……。

 そっちにも謝罪を……。

 ……休めと言われたのに仕事のことがどうしても頭に浮かんでしまって、軽く目頭を揉んだ。

 目を瞬くと駅が見えてきた。そろそろ決めないと。

 電車で帰るか、タクシーを捕まえるか。

 しばらく考えて、もし駅前にタクシーが停まっている、かつ待っているお客がいなかったらタクシーで帰ろうと決めた。


「……」


 心臓がうるさい。タクシー乗り場を確認する一瞬、ひときわ大きく跳ねた。