シェヘラザードに捧げる物語




「ありがとうございました、また色々とうかがうかもしれませんのでそのときはご協力お願いします」


 大賀くんの言葉に、立ち上がった川島さんは頭を下げて応える。そのまま私が入った診察室へとゆっくり歩いていった。


「……大賀くん、川島さんを送ってくれてありがとう」


 小袖さんが奥へと引っこんだのをさりげなく確認して、大賀くんにお礼を言った。彼は苦笑すると、「本当に近かった」と緩く首を傾げた。


「かかりつけ医なんだな」

「ここの先生かなり儲けてるはずだよ」


 私がおどけて見せると、彼は眉尻と口角を下げた。


「笑いごとじゃないだろう」

「笑いごとにでもしないとやってけない」

「……俺が親なら転職をお勧めする」


 むっすりと口を真一文字に結んだ彼に、私はクスクスと笑った。


「柴田さん、お会計です」


 奥から小袖さんが現れながら告げた。

 それに返事をしながらバッグを探る。