シェヘラザードに捧げる物語

 


 それは、高校三年の冬の日だったと記憶している。


 その日私と大賀(おおが)くんは日直で、放課後の誰もいない教室で学級日誌を書いていた。教室には西日がさして、私も大賀くんも、全てがオレンジ色に染まってやたらとまぶしかった。

 日直氏名には私の名前──柴田 律(しばた りつ)と書いた横に、“大賀 誠太郎(おおが せいたろう)”と記入欄いっぱいに大賀くんの名前が書かれている。その力強い線にまで、私はいつもドキドキしてしまうのだ。心臓の音がバレないように、ポーカーフェイスを装うのが高校生活の日課になってしまっていた。


 そうだ、高校生の私は、大賀くんに恋をしていた。


 ぶっきらぼうで、無愛想で、背の高い大賀くん。

 そのせいでクラスメイトからは怖がられていたけれど、本当は細やかで優しい人だと私は知っている。

 いつから好きになっていたか、なんて覚えていない。大体は皆してそんなもんだと思うし。