シェヘラザードに捧げる物語




「とりあえず小さなものからやっていきましょう」

「それしかないよなぁ」


 春日野さんは後ろ頭をかきながらペンを一つ抜き取り、自分のメモに適当な線を引いた。


「当たり、これは使える」


 向こうでは川島さんが、キャスター付きの椅子に座ったり動かしたりしている。

 ゴロゴロと響く音には何の問題もなさそう。


「ああ、駄目ですね……高さが調整できなくなってる」


 川島さんがレバーを動かしても、椅子の座面はちっとも動かない。

 その左腕からはもうガーゼが取れている。


「倉庫行きかな」

「とりあえず高さの調節不可とメモを貼っておきましょうか」

「あとでまとめて主任に聞きましょう」


 私たちは取っておくか捨てるか判断のつかない物品をメモしながら作業を続ける。

 雑談を交えながらの後片付けは、嵐が去ったあとの復旧作業のようで皆どこか前向きな表情だ。


「そういえばこの前入ってきたバイトの子、今日付けで退職だって」