シェヘラザードに捧げる物語




 職場で猛アプローチをかましていたのは皆が知っていたし、結婚を知らされたらそれをすっぱり止めて祝福したことも認識していた。

 だから──油断してしまったのだ。

 彼が「スピーチは任せてくれ」と自信満々に立候補したものだから、深く考えずにお願いしてしまい……。


 結果、披露宴は大惨事になりかけた。


 彼はあの後、上司に呼び出されて問い詰められたそうだ。

 そこで涙ながらに「披露宴を壊すつもりはなかった」「いざあの場に立ったら気持ちが溢れてしまった」と悪意がないことを強くアピールしたという。

 この件が切っ掛けになったのかはわからないが、彼は地方へ移動が決まったと聞かされた。

 そう話してくれた新婦様──今はもう奥様に、私は気になっていた女性について訊ねることにした。


「あの同僚の方、すごいですね。会場の空気が一瞬で変わりましたし」

「私の先輩なんです。私だけじゃなくて色んな人が助けらてますね」