シェヘラザードに捧げる物語




 岡本さんが絶句した。うん、普通はこうだよなぁ。


「先月も……ほら、川島さんが来ていただろう? ホテルの警備体制を見直したほうがいいんじゃないかい?」

「上には報告してるんですけどね、外にバレるのが恥ずかしいみたいで……警察に届け出るのも嫌がるんですよ」


 受付近くの長椅子に座るよう手で促しながら話すと、ため息をつきながら私と一緒に座った。

 その横顔を見ながら、ここまで親切にも気にかけてくれることをありがたく思う。半年前に足を怪我した主任を連れてきたときに長椅子を譲ってくれたのが始まりだった。


「上がダメならもう労基だな……」

「ええ……最終手段です」

「柴田さん、身体を壊したら本当に大変なんだからね?」

「はい、気をつけます」

「怪我もだけど病気も怖いんだから」


 やばい、このままお説教モードに入りそう。心配してくれるのは嬉しいんだけど、こればっかりはちょっとキツい。