シェヘラザードに捧げる物語




 水を打ったよう……とはこういうときに使うのかと思った。


「お母さん、どうして……」


 それだけやっと絞り出した。

 私、そんなことはちっとも望んでない。


「アンタのためよ」


 お母さんが私の目を見据えた。

 迷いなんて一切無いと言わんばかりの目。

 その様子にたじろぐと、ギラリと両目が光った。


「前も言ったでしょう、危険なことはもう止めてって」

「それは……」

「どうしてウエディングプランナーが何度も怪我して医者にかからないといけないの」


 ……涙が溢れそうだ。

 そのせいでギラリと光ったように見えたんだろう。


「せめて、せめてね、他のとこに勤めてほしい」

「お母さん……」

「お願いよ」


 お母さんが私に抱きついて、肩に顔を埋める。

 すすり泣きが聞こえてきて、何も言えなくなってしまった。


「柴田さん……」


 誠太郎くんがお母さんの背中をさすった。


「律、お母さんの言う通りだ」