シェヘラザードに捧げる物語




 そんなやり取りの間にも、チャイムは鳴り響いている。


「俺出るよ、目玉焼き見てて」

「うん、お願い」


 朝から一体どうしたんだろう?

 なにか事件でもあったのか、それとも私が粗相してご近所さんに迷惑をかけてしまったのか。

 不安を覚えながらも目の前のフライパンに集中しようとしたら。



「律! お母さんよ!」



 ……今度こそ、フライパンを丸ごとひっくり返しそうになった。


「……お母さん? なんで?」


 ここは冷静に、と火を止めキッチン兼リビングに入ってきたお母さんに向き直る。

 よそ行きの服を着たお母さんと、困った顔をした誠太郎くんがそこに立っていた。


「話があるからに決まってるでしょう」


 呆れながら近づき、フライパンをのぞき込む。


「やだ! このままじゃ焦げるじゃない!」


 貸しなさい、とフライパンごとキッチンでの主導権を奪われてリビングのソファーに座らされてしまった。