シェヘラザードに捧げる物語




 絶対に「結園ホテルは呪われてる」って噂されてそうだな……。

 私はぼんやりと自分や同僚の受診歴を思い返す。

 ホテルスタッフやお客様が、月に二、三回も怪我で来院したら……うん、私でも何かあるんじゃないかって勘繰るよね……。

 しかもこのあとまた誰かが来そうだし。


「ありゃ、柴田さん?」


 悟ったような諦めたような気分に浸っていると、少ししゃがれた声が後ろから聞こえてきた。


岡本(おかもと)さん、こんばんは」

「はい、こんばんは」


 岡本さんは真新しいカーディガンを羽織ってゆっくり歩いてきた。私のガーゼに気づいたらしく、シワだらけの顔をくしゃくしゃにして自分の額に手を当てた。


「今度は何があったんだい?」

「ああ、ちょっとトラブルがありまして」

「ちょっとじゃないだろう……」


 まるで自分が怪我をしたかのように痛そうな顔をするものだから、少し笑ってしまった。


「たぶんこのあとまた誰か来ます」