シェヘラザードに捧げる物語




 そう言って爽やかに笑うものだから、魔がさした……ううん、魔がさしたんじゃなく、罪悪感で頑なになっていた心がほぐれたんだろう。


「……うちに来る?」


 ポロッと本音が漏れてしまった。


「……それは……わかって言ってる?」


 大賀くんの目に熱が灯る。

 オレンジ色の照明に照らされて、ちりちりと炙られるような感覚がした。


「いい大人だよ? わかってる、つもり」


 口の中が乾く。

 頼んだレモンサワーに伸ばした指を、大きな手で包み込まれた。


「やっぱ止めたとか、なしだかんな?」

「そんなことしないよ」


 ……これで逃げ道はもうない。

 覚悟を決めるときがきた……ということなんだろう。

 私は別の手で握り返した。


「大賀くんも止めたとかなしね?」


 そう聞いた途端に、大賀くんは顔を伏せてクツクツと笑い出した。


「真面目に聞いてるのに……!」

「いや、大真面目だよ」


 大賀くんの目がスッと細くなる。


「高校のときから待ってたんだ、ずっと」