シェヘラザードに捧げる物語




 いや、おかしいだろう。

 そもそもこうして食事しているのは、照屋さんのことで騙したお詫びと、タクシー代の返金を兼ねてのものであって。


 間違ってもこんな空気にするためではない。


 ……奮発してわりと高めの居酒屋の、個室にするんじゃなかった。


「柴田は嫌か? どっちかの家で話すの?」


 大賀くんの顔が見れない。

 だけど逃げ場はある?


「嫌、というか……びっくりして。そういう雰囲気になったことなかったし」

「……まぁ、騒動の連続だったからな」


 大賀くんが遠い目をする。

 私も似たような表情なんだろうな、となんとなくだけどわかった。


「……今にも照屋さんから連絡がきそう」


 それかこの個室に突然入ってくるか。


「勘弁してくれ……」


 大賀くんが頭を抱えてしまったので、思わずクスッと笑ってしまう。


「やっと笑ったな」

「え?」

「ずっと張り詰めたみたいな空気だったから、心配してたんだ」