シェヘラザードに捧げる物語




 ……という話を、居酒屋の個室で大賀くんに教えてもらっていた。


「いいの? 個人情報の保護は」


 その後どうしたのか気になっていたのは確かだけど、という本音は飲み込んでおく。

 大賀くんは砂肝をかみ下して肩をすくめた。


「柴田は当事者だろ? 伝えたって誰かに言いふらすようなことはしないし」

「信用してくれるのはありがたいけど、こういう誰が聞いてるのかわからない場所でベラベラ喋るのはどうなの?」


 私はそう言いながら、川島さんと居酒屋で話した過去の事件を思い出していた。

 墓場まで持っていく秘密にしようと心の中で決めて、枝豆を咀嚼する。


「……家ならいいの?」

「えっ」


 思わず枝豆を取り落とした。


「柴田か俺か、どっちかの家ならいいの?」

「いや、そういうことじゃ……なくて……」


 妙にとろんとした目で見つめられて、この空気をどう戻したらいいのかわからなくなる。