シェヘラザードに捧げる物語




 裏口を開けるとすっかり暗くなっていた。コートを着ているおかげかそんなに寒くない。

 視界もクラクラしたりしないし、治療費もそんなにかからないことを祈ろう。

 髪を解きながらゆっくりと駐車場を横切って、一方通行の道路に出る。髪でガーゼが少しでも隠れるよう手ぐしで整えても、どうしても白いものが見えてしまう。

 もうしょうがないか。周りの人たちもそこまで気にしてないし。

 開き直って歩くこと五分、勝手知ったる病院の正面玄関までたどり着いた。


「あれ、柴田さん?」

「ああ、小袖(こそで)さん」


 受付で書類を整えていた彼女が顔を上げて、目を丸くした。


「今度はどうしました?」

「披露宴に乱入してきた人に殴られました」

「……本当にお疲れ様です、すぐ手続きしますね」


 彼女はもう何も聞かず私から診察券を受け取って、外科で受診できるよう準備してくれた。慣れたものだけど、本人は慣れたくもなかっただろう。