シェヘラザードに捧げる物語




 君塚さんのお父さんは頭を下げたまま言った。

 入院生活のせいなのか、前に見たときより身体が細くなったように感じる。


「本来なら佩人に直接謝罪すべきところなんですが……例の親戚に警察に迎えにいってもらっています」

「では、そのまま工場に向かう形になるんですか?」

「はい、二度と接触しないよう見張ります」


 原嶋さんのご両親が、肩から力を抜いて笑顔になるのが見えた。

 ホテルにも現れることはないだろう。


「あの、せめて半分だけでも賠償したいのですが……」

「いいえ、むしろありがとうございました」


 畑宮さんが顔を上げて食い下がると、畑宮さんは微笑みで応えた。


「あの人の本性を暴いてくれて、結婚せずにすみました」

「……私も、もう未練はありません」


 二人は目を合わせるとすっきりした笑顔を同時に浮かべる。


「……では、関係者全員でうちの事務所まで行きましょうか」


 大賀くんの再度の提案に、全員がうなずいた。