シェヘラザードに捧げる物語




 大きな身体が、崩れるように額付いた。


「申し訳ない……あなたにもなんとお詫びすればいいか……」


 川島さんが立たせて椅子に座らせようとするも、全くビクともしない。

 畑宮さんはその姿にどんな表情も浮かべず、ただ見下ろしていた。


「謝罪がほしいんじゃないんです。お腹の子を育てるために、養育費をもらいたくてきました」


 畑宮さんの言葉に、君塚さんの父親はその姿のまま会話を続けた。


「佩人に必ず必ず払わせます。親戚の工場に勤めさせて、その給料から出させますから……」


 震えながらも言い切った彼に、川島さんは肩に手を置いて何事か囁いた。

 それが効いたのか、君塚さんの父親はゆっくりとだが立ち上がり椅子に座る。

 川島さんは畑宮さんにも椅子を勧めると、俺たちのほうに近寄ってきた。
 

「……少し出ましょう」


 川島さんの小声に俺たちは、入ってきたドアから再び原嶋さんと春日野さんがいる部屋へと戻った。