シェヘラザードに捧げる物語




 本人があの状態では、父親のほうに持ちかけるしかないだろう。

 病人にこれ以上心労を背負わせるのは気が引けるが、子どものためには四の五の言っていられない。


「言いづらいことを話してくれてありがとう」


 どうして話してしまったのかと呆れていたけれど、こんな事情があるなら俺だって畑宮さんをホテルに連れて行く。

 ましてや関係が関係だ。こんな話はできれば当事者以外にはしたくなかっただろう。


「いいんです。君塚についてはもう未練はありませんが、この子には不自由はさせたくありませんから」


 畑宮さんははっきり言い切ると、「行きましょう」と颯爽と歩き出した。

 俺たちは慌ててそのあとを追いかける。


「ゆっくり行きましょう。身体に良くないですから」

「君塚さんのお父さんは逃げたりしませんから」


 畑宮さんに追いついて、両隣りに寄り添いボディガードのようにしてホテルへと向かった。