シェヘラザードに捧げる物語




「どうしても、許せなくって……全部めちゃくちゃにしておしまいにしてやろうと……」

「その……無事なんですか? お腹の子は……」


 我ながら間抜けな質問だと思う。

 妊娠してるって言ってるんだから、流れたりしてはいないことくらいわかるだろう、俺。


「ありがとうございます」


 畑宮さんは目をこすると、唇の両端を上げてみせた。

 大きくくっきりした瞳が潤んで、小さな顔の下半分は赤い唇で占められている。

 綺麗な人なのに、どうして君塚のような人間に引っかかったのか不思議だ。


「友人に言われて病院に行きましたけど、赤ちゃんは無事でした」

「そうか、よかった」


 俺はそう言うしかない。

 柴田が頃合いを見て話をつなげた。


「君塚さんのお父さんにとってお腹の子はお孫さんだし、養育費の件について話し合う必要があるから」

「本来なら君塚さん本人に請求すべきなんだがな……」