「そんないいのに……」
「俺がそうしたいんだ」
大賀くんは力の抜けた笑顔で私にスプリングコートを着せてくれた。バッグまで持たれてしまってはどうにもならない。
「気分が悪くなったらすぐに言ってくれよ?」
その気づかいに私は軽く首肯して内線で川島さんに連絡した。
『はい、川島です』
「もしもし、柴田です。今から退勤させていただきますので、引き継ぎと手続きをお願いします」
『はい、では真岡主任に連絡して……』
そこで川島さんの声が止まった。どうしたのかと聞こうとすると、『柴田さん、主任に代わります』と焦ったような声が響く。
『柴田さん、真岡です』
主任の息切れしたような声と一緒に別の声だか音まで聞こえてくる。
「主任、申し訳ありませんが今から病院に──」
『ああ、聞き取り終わったんですね。こっちはホント、大丈夫ですから』
「……やはり残って事情説明を」



