シェヘラザードに捧げる物語




 揉みながら続きを促すと、川島さんの少し震える声が聞こえてくる。


『主任が言うには、君塚さんの件が片付くまでしばらく在宅勤務にしたほうがいいだろうと』

「わかりました。お休みが明けてからで大丈夫ですか?」


 まったくどいつもこいつも。

 苛立ちを腹の底に押し込めて、私は淡々と手続きを済ませて電話を切った。

 そのままソファーに倒れ込む。



 ……君塚さんのことすっかり忘れてた……。



 君塚さんのお父さんがいるから大丈夫だって安心してたけど、心労で入院するのは予想外だった。

 ううん、君塚さんの暴れっぷりを見る限り予想できたことだよね……。

 本当に気の毒としか言いようがない。

 こう、新郎新婦のご両親が不幸になるのは何度も見てきたけど、やっぱり慣れないし気持ちが沈む。


 ──新婦が元カレと浮気したやつ……何ヶ月前だったかな。


 あれはこっちも肝が冷えた。うん。