シェヘラザードに捧げる物語




 思ったより穏やかに済んだ報告に、私は肩から力を抜いて「わかりました。では失礼します」と電話を切った。

 そのまま床に仰向けで寝転びそうになるのを、トークアプリの着信音に止められる。


「大賀くん……」


 送り主の名前を確認したとたん、耳元で血の気が引く音がする。

 恐る恐るアプリを開いた。


〈今日はびっくりした。二人が付き合ってるなんて全然知らなかった〉

〈いつから付き合ってたんだ? 水くさいな〉


 ……信じてる振りで嘘を暴こうとしてる?

 どう返信するか考えて、私はあくまで自然な理由を考えた。


〈マッチングアプリで知り合って、それでお付き合いすることにしたの〉

〈あんなことが起きたから話すタイミングが中々なくて〉

〈落ち着いたら話そうと思ってた〉


 これで騙されてくれるかな。

 大賀くんは弁護士だ。嘘か真実かを見分ける目を養っているはずだし、生半可な理由だと通じないだろう。