シェヘラザードに捧げる物語




「……やりかねないな」

「ただ、柴田さんのほうは本当にわからないです」


 盗聴はバレていないみたいだけど、話の矛先が私に向いてしまった。


「後で電話かメールで聞きます」

「それしかありませんね」

「わかったら報告します」


 ……上手い言い訳を考えておかないと。

 どう言おうか?

 私は付き合ってるつもりだったけど、照屋さんは違ってた……とか。


「わかれば、ですが」

「難しいですね」


 うーん、この様子じゃ適当な嘘では通じないだろうな。

 そもそもどうやって出会ったのかって話だし。


「それじゃあ、これからどう交渉するかを話し合いましょう」

「ええ。仕切り直して」


 二人の会話に、私たちは顔を見合わせた。

 私が唇に指を立てると、照屋さんは同じように指を立てる。

 一応は通じたことにホッとして、私はさりげなくイヤホンを押さえた。


「では改めて、君塚さんには慰謝料の請求と接近禁止、浮気相手は不問、ホテルは訴えない……変わりはありませんね」