シェヘラザードに捧げる物語




 こちらに向けられる静かな、無数の視線を感じながらそう言うと、二人は大人しく席に戻っていった。


「……」

「……」

「……申し訳ありません……」


 蚊の鳴くような声で謝罪されて、なんだか力が抜けてしまった。


「ちょっと静かに……うん、まだ食べてるだけか」

「柴田さん、その……」

「起きたことは仕方ありませんよ。今は仕事に集中しましょう」


 縮こまっている照屋さんは、「本当にすいません」と小声で伝えてくると、そのまま静かにイヤホンをはめ直した。

 フォークを落としたときにイヤホンを外させておいてよかった。

 大賀くんや原嶋さんに見られて言及されたらどう説明したらいいかわからなかったし。


「私たちも食べましょう。怪しまれる」

「そうですね……」


 照屋さん、まだ暗い影を引きずってる……。

 これは私が頑張らないと。

 白身魚をちまちま食べながら耳を澄ませる。


 ……食器が触れ合う音ぐらいしか聞こえない。