シェヘラザードに捧げる物語




「……やりかねないな」

「ただ、柴田さんのほうは本当にわからないです」


 うん、こればかりは俺もわからん。


「あとで電話かメールで聞きます」

「それしかありませんね」

「わかったら報告します」


 お願いします、と頭を下げてきた原嶋さんに頷く。


「わかれば、ですが」

「難しいですね」


 俺はその言葉に斜め前の席に目をやった。向こうはまだデザートは来ていない、と思う。

 ……あの様子じゃ、ちょっとやそっとじゃ話してくれないだろうな。


「それじゃあ、これからどう交渉するかを話し合いましょう」

「ええ。仕切り直して」


 今は柴田や照屋の思惑を考えていても仕方がない。

 原嶋さんとこれからどうするかを話し合って、できる限り進展させないと。


「では改めて、君塚さんには慰謝料の請求と接近禁止、浮気相手は不問、ホテルは訴えない……変わりはありませんね」

「はい。変わりありません」