シェヘラザードに捧げる物語




 席に案内されて、従業員の人たちが去ったあと、俺と原嶋さんはどちらともなく互いに声をかけ合った。


「その、原嶋さんからどうぞ」

「いえ、大賀さんから」


 ……これでは本当の見合いのようだ。


「では失礼して……ご両親の様子はどうですか? 相変わらず何も話してはくださらない?」


 しかし恐縮し合っていては始まらない。俺から原嶋さんに今の状況を確認すると、彼女はため息混じりに話してくれた。


「全く。何を聞いても『お前は何も心配しなくていい』とだけ……スマホも取り上げられてしまって」

「スマホもか……」


 彼女だけの連絡手段がないのは厳しい。かつ軟禁状態に置かれてるようなものだ。

 俺はこうして話し合えてはいるが、それは彼女の両親が俺たちをくっつけようとしているから。

 仮に、俺とは別の奴をくっつけようとした場合……彼女の意思を確認することはできなかっただろう。