シェヘラザードに捧げる物語




 目が泳ぎまくって声もところどころ裏返ってる……。

 隠しごとができないタイプか……と思いながら適当な相づちを打った。


「柴田さんはどうしてですか? その、こんな色々とスレスレなことを」

「私ですか?」


 運ばれてきた食前酒を飲み干して、口の両端だけを上げてみせる。


「職場……ホテルを訴えないでくれるというので」

「……そこまで計画していたんですか……」

「確約してくれたわけじゃないんです。私の働き次第ですって」


 そう言いながらイヤホンをはめた。髪型のおかげで上手いこと隠れているだろう。


「それは……使うだけ使って、やはり訴えるとか、そういうことも……」

「そうですね。ありえます」

「だったら」


 どうして、と言いかけた照屋さんをさえぎって肩をすくめた。


「少しでも可能性があるなら、そっちに賭けたいじゃないですか」

「柴田さん……」

「今の職場の皆が好きで、守りたいんです」