シェヘラザードに捧げる物語




「すいません、失礼を……」

「かまいませんよ」


 私が苦笑すると、照屋さんは気を取り直すように入り口までエスコートしてくれた。

 ドアマンの二人は慣れた様子で私たちを迎え入れる。


「いらっしゃいませ」

「二人で予約していた照屋ですが」

「照屋様ですね。荷物をお預かりいたします」


 流れるように薄手のコートを預け、予約していた席へと案内される。

 席に座らされ、正直どんな料理なのかよくわからないメニューを案内されて、息が詰まりそうになった。

 店員さんがいなくなり、ようやくひと息つけると肩から力を抜く。


「……緊張しますね」

「そうですね……」


 たぶん、今の私とそっくりな顔した照屋さんと目が合った。

 少しでも自然に、この場の空気を楽しんでいるように見せたがっている表情。


「柴田さん、こっちのイヤホンを」

「ありがとうございます」


 照屋さんからワイヤレスのイヤホンを受け取る。

 ……盗聴用の。