シェヘラザードに捧げる物語




「協力、ですか?」

『はい。私が指示いたしますので従っていただければそれで結構です』


 口の中が乾いて、手のひらが汗ばむ。


「協力したら」

『はい?』

「協力したら、ホテルを訴えないでいただけますか?」


 沈黙が流れる。

 自分の息づかいだけが聞こえてくるようだった。


『……考えておきましょう』

「私の働き次第ということですか?」

『お好きなようにとらえていただいてかまいません』

「……そうですか」


 言質はとれなかったか……。

 それでも、彼女の一番の願いは大賀くんと原嶋さんが結婚することだ。

 結婚すれば、ホテルにはもう見向きもしなくなる可能性がある。

 それなら私の選択は一つしかない。


「わかりました。協力します」


 声は震えていなかっただろうか。

 できる限り冷静に言ったつもりだけど、彼女には伝わっただろうか。


『ありがとうございます。では指示に関しましては追って連絡いたします』