復讐の悪女になるはずが、天使系義兄からピュアな執着と溺愛で邪魔されてます!

(こいつ、ゼリックの評判を知らないわけ?)


 実力も人柄もまさに神童と大評判だっていうのに。
 ――いや。アインハードの俺様気質を考えると、知っていてあえて『自分のほうが上』だと考えている可能性も大いにある。幼いって恐ろしい。まあ、このぐらい根拠のない自信を持っていたほうが、生きやすいし幸せな気はするけど。


「よし、やるか」


 訓練場に到着すると、さっそくアインハードがそう言った。なお、殿下はわざわざローブに着替え、気合満々という風貌である。


「言っておくが、手加減はするなよ?」

「もちろんです。妹に無様な姿は見せられませんから」


 ニコリと微笑み、ゼリックがわたしを見る。
 ……いや、そこはわたしのことは置いておいて、空気を読んだほうがいいのでは?なんてことを思った。もちろん、アインハード相手に本当のことを言えないから、あんな返答になっただけだと信じているけど。


 訓練場にはわたしたち数人しかいない――ように見える。実際は姿を消した魔術師が十数人、近くで控えているようだ。教えてもらったわけじゃないけど、なんとなく気配でそうとわかる。おそらくは、なにかあったときに瞬時に対応できるよう待機してくれているんだろう。アインハードは王太子だし、なにかあったら問題だもんね。――まあ、わたしがいずれその『なにか』を起こすんだけど。