復讐の悪女になるはずが、天使系義兄からピュアな執着と溺愛で邪魔されてます!

「ここには他に誰もいないようだな」


 しばらくして、男の一人がそう言った。カーテンの間やクローゼット、バルコニーなどを確認したようだけど、ベッドの下に赤ん坊が隠されているとは思わなかったらしい。
 足音が複数、部屋の出口に向かっていく。わたしは密かにため息をついた。


(助かった……とは思えないな)


 むしろ、事態は絶望的だと言わざるを得ない。

 状況を整理しよう。

 わたしはエルシャ。生まれて五ヶ月の赤ん坊だ。両親はサウジェリアンナ王国の国王と王妃で、つまりわたしはこの国の王女だ。


 そんなわたしには前世の記憶がある。日本人の女の子として生きた記憶だ。

 前世のわたしは物心ついた頃から父親がおらず、シングルマザーの母親と一緒に暮らしていた。
 けれど、母はわたしの存在を疎み、ほとんど家に帰ってこなかった。いつもお腹はペコペコだったし、季節外れのボロボロで小さい服を着ていた。洗濯もろくにできず、お風呂に入ることも満足にできなかったから、クラスの子たちに大いにいじめられた。手を差し伸べてくれる大人もいたけれど、保護された数日後には結局、母の元に返されてしまうということの繰り返しだった。