復讐の悪女になるはずが、天使系義兄からピュアな執着と溺愛で邪魔されてます!

 ……そうだよ。ただ殺したいだけなら、わたしが王太子妃になるなんてまどろっこしい段階を踏む必要なんてない。わたしの身を犠牲にすれば――そうすればすぐに念願が成就するんだもん。妃になったあとでこっそり毒を飲ませるとか、賊が入ったことにして暗殺するとか、わたしがそういった方法を考えていたのは、復讐を果たしたあとに自分が生き残ることを考えていたからだ。

 だけど、両親はそんなことを望んでいない。ただ、復讐を果たせればそれでいいんだ。だってわたしは、そのためだけにこれまで生かされてきたのだから……。


「リビー」


 名前を呼ばれるとともに、ぶわりと空気が震える感触がした。まるで宙に浮かんでいるかのような浮遊感とともに、体の感覚が一気に戻ってくる。


「お兄様」


 わたしを呼んだのはゼリックだった。声がした方向を振り返ると、ゼリックはわたしを見つめながら微笑んでいる。
 と同時に、わたしは奇妙なことに気づいた。
 周りにいる人間――アインハードや彼の両親、それから夜会の参加者たちが石のように固まっている。会場からまったく音が聞こえなくなったし、誰一人呼吸すらしておらず、ピクリとも動いていない。まるで時間が止まってしまったかのように。