***
木材や肉が焼け焦げるような香りが漂い、城内の至るところから甲高い悲鳴や怒号が響いてくる。
(いったい、なにが起きているの?)
ただならぬ雰囲気にわたしはブルリと体を震わせた。
できることなら直接様子を見に行きたい。だけど、残念ながらそれは不可能だ。
というのも、今のわたしは生まれてほんの五ヶ月の赤ん坊で、寝返り程度の身体能力しかないからだ。
「大丈夫ですよ、エルシャ様。わたくしが必ずお守りしますからね」
ブルブルと震えながら、侍女がわたしを抱きしめる。生まれたときからずっと世話係を務めてくれている十八歳の女の子だ。
(ダメだよ)
わたしなんて守らなくていい。早くここから逃げなきゃだよ――そう伝えたいのに、言葉が出ない。かわりに涙がポロポロとこぼれ落ちて、嗚咽が漏れた。
「こっちに人がいるぞ!」
と、野太い男性の声が聞こえてくる。侍女はハッとした表情でこちらを見ると、ベッドの下に急いでわたしを押し込んだ。
「最後までお側にいれず、申し訳ございません。どうか、エルシャ様はご無事で」
侍女はわたしの口にハンカチを押し込み、決死の表情で前を向く。それと同時に、バン!と勢いよく部屋の扉が開き、数人分の足音が続いた。
木材や肉が焼け焦げるような香りが漂い、城内の至るところから甲高い悲鳴や怒号が響いてくる。
(いったい、なにが起きているの?)
ただならぬ雰囲気にわたしはブルリと体を震わせた。
できることなら直接様子を見に行きたい。だけど、残念ながらそれは不可能だ。
というのも、今のわたしは生まれてほんの五ヶ月の赤ん坊で、寝返り程度の身体能力しかないからだ。
「大丈夫ですよ、エルシャ様。わたくしが必ずお守りしますからね」
ブルブルと震えながら、侍女がわたしを抱きしめる。生まれたときからずっと世話係を務めてくれている十八歳の女の子だ。
(ダメだよ)
わたしなんて守らなくていい。早くここから逃げなきゃだよ――そう伝えたいのに、言葉が出ない。かわりに涙がポロポロとこぼれ落ちて、嗚咽が漏れた。
「こっちに人がいるぞ!」
と、野太い男性の声が聞こえてくる。侍女はハッとした表情でこちらを見ると、ベッドの下に急いでわたしを押し込んだ。
「最後までお側にいれず、申し訳ございません。どうか、エルシャ様はご無事で」
侍女はわたしの口にハンカチを押し込み、決死の表情で前を向く。それと同時に、バン!と勢いよく部屋の扉が開き、数人分の足音が続いた。



