こもれび日和

翌朝。

いつも通り電車に乗り、律と出会った蘭は律の目を見つめました。

「蘭さんの小説、とても良かったよ。冒頭のスープの説明がすごく好きだな」

「本当に?変じゃありませんでした?」

「全然。もっと読みたかったよ」

その律の言葉に、蘭は安堵の息を吸って、少し顔を赤らめました。

「良かったです。私は幸せです。」

その日から2人の間には作品や思ったことを共有できる関係という新しい糸が追加されたのでした。

律が蘭の小説を読んで数日後。

律は、蘭が電車で降りる数駅まで、タイミングを待っていました。

「今日、絶対に言う。たとえ、蘭さんに拒絶されたとしても。言わなければ、今日は終わってしまう」

蘭が降りる駅が近づいてきました。

「蘭さん、週末は時間がありますか?」

「えっ?ありますけど」

「良かった。もし、よろしければ、一緒に映画を見に行きませんか?」

と、律が言うと、蘭は3秒沈黙しました。

その3秒は律にとっては3分のように感じました。

「行きたいです」

「ほ、本当に!?」

蘭は恥ずかしそうに視線を下げました。

そして、小さな声で言いました。

「誰かと一緒に映画を観に行くなんて初めてです。それが、律さんなら、いいですよ」

その瞬間、律の胸に何かが光る音がしたような気がしました。

映画館の前で、蘭は淡い水色のワンピースを着ていました。

律のワイシャツはいつもより少し良いものでした。

お互いの距離はいつもは少し遠い。しかし、心は近くなりました。

映画の途中で、主人公が大切な人を守るシーンで蘭の肩が微かに震えました。
(大丈夫かな...)

触りたいけど、できない、
律は気持ちをそっと膝に置きました。