こもれび日和

「こんな風に話すのは、ちょっと」

「なんか緊張してる?」

「はい、ええと、緊張してます」

律は蘭の正直さを笑いました。

雨が弱まるまでの30分。

蘭と律は、お気に入りの本や、大学生活でのこと、将来のことなどについて語り合いました。

雨が止み、外に出た時、2人の間の距離は、さっきより少し縮んでいました。

翌週の朝。

蘭は、いつもの電車に乗り、あるファイルを大事そうに胸に抱いていました。

「あの、律さん」

「ん?」

「これ、私の小説です。律さんに読んで欲しいんです」

「えっ?いいの?見せて」

蘭は明らかに緊張していました。

律は、最初のページから、蘭の小説を注意深く読み始めました。

蘭が書いた小説は、
「食べ物の匂いを嗅ぐだけで記憶が蘇る少年の物語」でした。

読めば読むほど、蘭の繊細な描写と温かい言葉が律の心に響きました。

読み終えたら、律はしばらく、ページを閉じることができませんでした。