いつも混んでいる通学電車に、まだ慣れない律は、毎朝少し疲れていました。
その日もいつも通り、いつもより少し時間をずらして電車に乗りました。
電車が少し揺れた時、律が立っている前の席に座っている女の子が、膝の上に広げていた文庫本を、何かに引き込まれたかのような表情で呼んでいました。
その子が、小鳥遊 蘭(たかなし らん)でした。
肩まで伸ばしている髪がそっと揺れた時、時々、本のページをめくる細い指が印象的でした。
「すごく集中しているなぁ…」
律は心の中でそう思いながら、蘭のことを見つめていました。
その時、また電車が揺れました。
蘭の膝から、読んでいた文庫本が落ちた時、律は反射的に拾いました。
