こもれび日和



その横顔は、

最初に文庫本を読んでいたあの日と同じで、

でも、少しだけ柔らかくなっているように見えました。

蘭が無事にレポートと原稿を提出し、

新人賞に応募し終えたのは、八月の終わり頃でした。

「出してしまったら、
 もう私の手を離れてしまいました。
 怖いような、ほっとしたような」

そう言って笑う蘭のために、

律は、とっておきのご褒美を

用意することにしました。

「日曜日、空いてる?」

「はい、多分。
 何かあるんですか?」

「ちょっと、付き合ってほしいところがあって」

日曜日の午後。

二人は電車を乗り継いで、

大学から少し離れた小さな丘の公園に向かいました。

蝉の声は少し弱くなり、
代わりに、風の音が目立ち始めている。