こもれび日和

二人は同時にふふっと笑い、

車内の揺れも、

朝のざわめきも、

少しだけ遠くに感じられました。

「原稿、どう? 進んでる?」

「はい。一応、締め切りは守れそうです。
 今回の主人公、
 ちょっと律さんに似てるって思いました」

「えっ」

「料理をしながら、
 『誰かのことを思い出すスープ』を
 作る人なんです」

「それ、完全に俺じゃん」

「ふふ。
 モデルって言ったら怒るかなと思って、
 少しだけ設定を変えました」

「いや……なんか、嬉しい。
 俺の人生、いつの間にか
 小説の中に入り込んでるんだな」

「律さんの作る料理も、
 私の中で、ちゃんと物語になってます」

蘭はそう言って、
窓の外の、流れていく景色を一瞬見つめました。