私が通う、華彩学園高等部の校舎につながる緩やかな坂道は桜並木になっている。
終わりかけの花に、桜の若々しい緑の葉っぱが芽吹き始めている様子をぼんやり眺めながら、私は合皮のスクールバッグの肩ひもを軽く握った。
校門をくぐり、外靴のまま校舎に足を踏み入れる。華彩学園高等部は一足制なのだ。
私のクラス――2年Ⅳ組の教室の扉を開け、窓側から2列目の後ろから2番目にある自分の席に腰かける。
スクールバッグから数Ⅱの補助教材と水色のペンケースを取り出し、問題を無心で解いていく。
赤色のサインペンで丸付けと添削をしていると、前の席の女子――佐野さんが私に声をかけてくれた。
「おはよ、樺音ちゃん」
栗色のポニーテールを揺らしながら愛らしく微笑む彼女に、私は「おはよう、佐野さん」と無難に返答する。
「きょう現代文の課題あったっけ?」
「あるよ。」
「ありがとー」
何の温度も感じない声でそう言い放った佐野さんが、ぱたぱたと入口に向かう。
「おはよ、華!」
先ほど私に向けた外向きの態度とは違う佐野さんの態度に、私の心で複雑な色が作られていくのがなんとなくわかる。
赤いリボンを首に巻いたトイプードルのキーホルダーが、『華』と呼ばれた女子生徒のリュックで揺れる。
その赤が、教室の喧騒でやけに存在を主張していた。



