そして、数日がすぎた。


その日は朝から雨だった。

ゆるやかな長い上り坂を登り、土手の上に出ると、遠くあの栴檀の木が望める。

急に雨脚が強まった。

カッパ越しに雨宿りにぴったりの「私の場所」をうかがう。
まさかとは思ったが、そこにはずぶ濡れになった小次郎がいた。

私は舌打ちをすると顔をゆがめる。
そして、逃げるようにペダルを強く踏み込んだ。

(あぁ、嫌だ、いやだ)

雨がまぶたにまとわりつき、しずくが私の視界をはばむ。

(どうして、こんな雨の日までいるのよ)

どこか他に雨宿りするところを探さなきゃならない。



(・・そうだ、小次郎の家にしよ)

我ながら良い考え。
小次郎がいないことだけは間違いない。

私は小次郎の家を目指した。