この二人の政略結婚に意義ある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば永遠に沈黙せよ。

 顔を覗き込んだノアはそう言って、優しく私の背中を押した。

 ……長い日になる。彼の言葉を受けて、私はポッと顔に熱が集まるのを感じた。

 ああ。そうだ。結婚式が終われば、初夜が待っている。

 肉体関係のない貴族夫婦は、夫婦として認められない。肉体関係さえなければ、婚姻無効も申請出来る。

 初夜を過ごして私たちは名実ともに夫婦となり、これで貴族として一人前と認められるのだ。

 ノア……ああ。ノア。私の好きな人。大好きなノアと、結婚できる事は嬉しい……嬉しいけれど、私はどうしても胸が苦しくなってしまうのだ。

 政略結婚を装い、狡い手段で彼を手に入れた罪悪感で。

 ノアは馬車に揺られる中でも、体調を気遣い、明後日の迎えを約束して彼は去った。

 とてもとても、素敵な男性だ。三年間もの時を過ごした婚約者として、それは保証出来る。

 私は彼と結婚すれば、幸せな貴族夫人として盤石な生活を送ることが出来る。

 ……私はノアと結婚するために、祖父へと頼み込んだ。ウェイン伯爵の息子と結婚したいから、あの家へ縁談を申し込んで欲しい……と。