この二人の政略結婚に意義ある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば永遠に沈黙せよ。

 心の中でそれはいけないことだと嗜める自分は眉を顰める。向かい側でだからどうしたと余裕の笑顔で微笑む私も、そこには存在する。

 だって、私はノア・ウェインを『政略結婚』する相手にすることが可能なのだ。

 本来、貴族令嬢の結婚相手は親が選ぶ。けれど、私には幼い頃からの婚約相手が居ない。

 それは、政略結婚をしたけれど今では家族として愛し合う両親が、結婚相手を自由に選ぶことが出来なかったことに起因していた。

 後継ぎの兄は、政略結婚は避けられない。現に伯爵令嬢の婚約者がいる。彼女は美しくて聡明な女性だ。家柄もちょうど良く、父も母も彼女ならばと望んだ縁談相手。

 けれど、家族から可愛がられている自覚のある妹の私は、社交界デビューした後に求婚者の中から好きな男性に嫁げば良いと幼い頃から言われていた。

 貴族だと言うのに政略結婚をしなくても許されている。だと言うのに、これから私は、それを望もうとしていた。

 それも、ルーシャン公爵家当主である祖父が、私に大層甘いことも理解しているからこそ……本当に姑息な孫娘だった。


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