この二人の政略結婚に意義ある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば永遠に沈黙せよ。

 けれど、兄が言うにはノアは評判の美青年なのだと言う。学業も優秀で周囲からの信頼も厚いとなれば、私以外にも彼と結婚したい女の子が、周囲にたくさん居てもおかしくない。

 ……いいえ。もう既に彼と結婚すると狙いを定めている人も居るかもしれない……けれど、私はルーシャン公爵令嬢だ。家柄だけならば王族以外では、一番に身分が高いとされている。

 貴族はわかりやすく、縦に並べられた三角形の階級社会だ。頂点に立つ公爵家に逆らう下位の貴族は居ない。

 ノアはきっと、私のことが好みでなくても……私と結婚したいと思うだろう。もし、将来的に出世を狙うような打算的な男性であれば、よりそう思うことだろう。

 宰相を務める祖父も父もアスニャン王国では大きな権力を持ち、ノアと兄が貴族学校で同室なのであれば、彼ら二人は気心も知れている。兄が言う通りに私の結婚相手として、彼は申し分ないのではないかと思う。

 私の心の中には、強い衝動が湧き上がっていた……これをして、後先考えていないと、誰かに笑われても良い。