「……お兄様! さきほど帰られた方は、どなたなのです?」
二つ年上で私と驚くほどに良く似ている兄ロバートは、慌てて階段を降りてきて息を荒げた妹を見て驚いた表情を見せていた。
ふんわりとした茶色の癖毛に、優しい榛色の瞳。そして、どちらかというと可愛らしい童顔寄りの顔。私と兄は、どちらもおっとりとした母似なのだ。
「あ……ああ。シェリル。あれは、僕の先輩のノア・ウェインだ。寮では同室なので、仲良くさせてもらっている。評判の美青年だから、お前も目を奪われたのだろう」
苦笑いをした兄は妹が見目の良い男性へ興味を持ったことを、すぐに察したらしい。
兄が揶揄った通りなので、私はそれを否定出来なかった。
少しだけ訂正するとすれば、目だけでなく心も奪われてしまった……ということだけど。
「……ノア・ウェイン様」
胸に手を当てて彼の名前を噛みしめるようにして呟けば、ロバートは小さく息をついて肩竦めた。



