この二人の政略結婚に意義ある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば永遠に沈黙せよ。

 だって、彼と彼を愛する人を引き離したのは、私かもしれない。

 伯爵令息は公爵令嬢との縁談を断らない。断れるはずがない。そう思ったのは、私なのに。

 ああ……なんて、罪深いことを。

「どうか、誤解しないでください。あれは、違います。シェリルが考えているような相手ではありません」

 ノアはとても落ち着いた口調だ。けれど、彼は今まで私に『別の相手』が居ることを、気取らせなかった。

 きっと、嘘をつくのが上手いのだ。それは、私にとって……良いことなのかもしれない。

 少しでも長く、自分が見ていたいと望む幻想を信じることが出来るから。

「……ノア。私は何も見ていません。私たちは政略結婚をするのです。私はちゃんと黙っていられます。だから……」

 黙っているから……黙っている。だから、ノアとの結婚相手は私だ。他の女性になんて、その席は奪わせない。

 ……ノアが私の夫であるならば、私は黙っていられる。