この二人の政略結婚に意義ある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば永遠に沈黙せよ。

 心地良い風が吹いて、私のスカートを揺らした。ふんわりとした素材で出来たドレスは着心地が良い。けれど、これは貴族令嬢が好むような装いなので、貴族夫人になれば慎むことになるだろう。

 私は公園の中にある湖を取り巻く小道を、ゆっくりと歩いていた。

 傍近くに寄り添うはずの護衛騎士には、離れてくれるように頼んだ。彼らは渋ったけれど、見晴らしの良い場所を歩くのであれば……と、特別に許してくれた。

 そして、ゆったりと歩く私は、目の前に信じられない光景があることを目にした。

 ……ノアが女性と親密そうに話している姿を、そこに見たからだ。

 ドクンッと胸が大きく高鳴った。ああ……ノアは、私のことを好きではない。好きではないから、もしかして、違う女性が既に……?

 そこで、ノアは不意に視線を向けた。何故だろう。彼を初めて見た時のことを思い出した。そうだ。彼はただ一瞥しただけで、私を恋に落とした。

 あの時のノアは私のことなんて、認識もしていなかったのに。

 ああ……私、いけない。政略結婚する相手なのよ。ここは、あら偶然ねと声をかけて、にっこり微笑んで通り過ぎなければ。