この二人の政略結婚に意義ある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば永遠に沈黙せよ。

 当主同士が納得している政略結婚なのだから、ノアは決して断らない。いいえ。断れない。格上の公爵令嬢との縁談を、ウェイン伯爵が断るわけがないのだから。

 ただ、ノアは私と、結婚したかったわけではない。本来ならば、作法無視(イレギュラー)なやり方で、私は彼のことを手に入れた。

 貴族としての政略結婚と称して、家と家の事情で結婚する相手に成りすました。

 ……もし、私がノアのことをあまり好きではなく、親に決められた完全な政略結婚としての相手としてであれば、こんなにも罪悪感を抱かずに済んだのかも知れない。

 けれど、私はノアのことが好きだ。自分で望んだことなのに、そんな彼にはまだそれを言い出せずにいる。

 ノアのことが好きだからこそ、こんな卑怯な手で彼を手に入れて良いものか、どうしても……自分の中で納得させることは、難しかった。

 その日の夜、私はベッドに横になり眠ろうと思った。

 眠ろう眠らなければと思う度に、眠れなかった。私たちの結婚をお祝いする周囲の空気に包まれて、より罪悪感は増したかもしれない。